遺書。

死ぬまで生きる。その記録です。毎日、午後9時更新。

渋谷で西村賢太『芝公園六角堂跡』を読む。

 なんかスランプに輪をかけて、かなり苛々している。今日は、せめて自分を労おうと、渋谷に美味いものを食べに行くことにする。イタリアンとかフレンチなどに行く趣味はないものの、美味いものといって思いつくのが牛タンくらいしかないのが悲しい。

 渋谷駅東口から並木橋の方に少し行ったところに「ねぎし」があったはずだが、ネットで調べたらなくなっていたので渋谷ヒカリエの「利久」へ。この前、行ったときには、値段の割に、べらぼうに量が少なかった気がするのだが、そんなことはなかった。


 クラフトビールの製造も始めたとのことで、食前にビールを飲む。黒ビールを飲もうと思ったら売り切れのことで、IPAを頼む。IPAらしさもあり、しかし、ホップが効いた、ひと味違った雰囲気。私的には好み。そして牛タン定食。

 

 ネットの情報を見ると、ケチらず最も高い「牛タン極定食」を頼むべしなどと書いてあって、前回、来たとき、ショボいと感じたのは、そのせいかと思うが、すでに普通の牛タン定食を頼んでしまった。これは「牛タン定食(4枚8切)」税別2,890円。

 でも、とろろがオプション(150円)であることくらいで、前回のようにショボいという感じはしなかった。何よりテールスープが美味しい。白髪ネギはシャキシャキだし、牛テールも沢山、入っている。まぁ、たしかに、もう少し量があればとは思う。

 ビールが醒めるまでボンヤリして、行きつけの喫茶店へ。午後1時に行ったのに、入店に5人待ちだった。いつから、こんな人気店になってしまったのか。けっこう高い店なのに、40分で出てしまった。出たら店外には50mの行列… 何が起こったの?

 

 ケーキも店内で焼いていて美味しいのだが、昼食直後でビールも飲んでいるのでコーヒー1杯のみ。そして、写真を撮るのを忘れたが、西村賢太著『芝公園六角堂跡』を読む。カラーひよこさん (id:color-hiyoko) が、一時、西村賢太は面白いと読んでいて、その影響。

(私が読んだのは単行本版)

 

 もう何週間も最初の10ページくらいで止まっていて、図書館で再貸し出しを繰り返してきたのだが、さすがに、そろそろ読み終えなくてはと思い、最初の1編を読み終わるまで店を出ないと決める。そうしたらスラスラ読めて、40分で終わってしまった訳だ。

 この小説を選んだのは単純な理由で、タイトルが家の近所だから。近所だから位置関係が判るけれど、判らない人が読んだら、全然、判らないだろうなと思う。ただ、近所だから面白いというのもあるが、文学作品としても確かに面白い。

 この私小説家の著作を読まなければ、絶対に本腰入れての小説書きなぞしなかったであろうし、またこの私小説家の無様な人生の軌跡を知らなければ、こんな、お利巧馬鹿ばっかりの書き手と編輯者と評論家による、くだらぬ凭れ合いのマスかきサークルの中で、それでも尚と書き続ける意地なぞは、とっくに打捨てしまっているに違いない。

(文藝春秋版46ページ)

 

 この1文で、私は溜飲が落ちた。私の勉強不足と言われれば反論のしようがないが、日ごろから、あの小難しくて何が言いたいのか判らない文章群を、ここが凄い、面白いなどといって捏ね繰り回している最近の文壇を見ると反吐が出る。

 あの南木佳士先生さえ、「人間存在の真実に触れる一言半句が見あたらない」だったかな? と作家が編集者に言われボツられるということを『阿弥陀堂だより』で書いていた。私は歳を取ってから、芥川賞・直木賞を獲ると自然文学者は終わりなんじゃないかとさえ思うようになった。

 さて、本編に戻る。敢えて引かないが、最後の一段で、俺も駄目人間だけど頑張るさ… という気になった。これは、私が敬愛する鷺沢萠の作品群と全く同じ印象。私の座右の銘「駄目なら駄目なりに頑張る」が再び輝きを増した。

 という訳で、意外とスラスラ読めて、元気が出る1編だった。本書には、まだ3編、収録されているが、この調子なら半日もしないで読めるのではないかと思う。「駄目なら駄目なりに頑張る」、これからも唱え続けて行こうと思い、2・3週間ぶりに山手線の外を歩いた。

 

 

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