今日は土用の丑の日だった。実は、私はあまり鰻が好きではない。しかし、今年、母を亡くして、今年は食べなければと思った。
母は鰻が好きだった。父は鰻が大好物だったのだが、母も鰻が好きだと知ったのは亡くなる前年だったか。
実家の町に1軒だけ鰻屋があり、そこそこ評判がいい。母の話だと、元々は出前のみしていた店だが、最近になり店内でも食べさせるようになったという。
母が亡くなる直前、もう、歩くのも覚束なくなった母とタクシーで店まで行ったことがある。しかし、閉店だった。
それから、母の気が違って来客を拒絶するようにもなり、私は実家に行きたくても行けなくなってしまった。
母を管理する包括支援センターの職員によると、鰻が食べたいといってヘルパーに地元のスーパーで鰻を買ってこさせるのだが、ろくな鰻がない。
しかし、それを、市販の鰻のたれを使ってソテーし直して食べていて、やるな… と思ったという。鰻が嫌いな私も、ほとんど鰻のタレの味で食べていたようなものだ。
母は死ぬ前に美味い鰻を食えなかったことが心残りだったのではなかっただろうか。 pic.twitter.com/azXymFkmP9
— 𝒇𝒐𝒏𝒕𝒕𝒐𝒕𝒐 (@fonttoto) July 23, 2022
今日、私は、初めて国産の鰻を食べた。なぜか美味い鰻を食べることが母への供養になるような気がした。
そして、初めて、あぁ、鰻というのは美味いものなんだな… と思った。タレの味だけしかしないものとは違うし、そもそもタレや山椒の味も違う。
そしてビールを飲み、これで母も美味い鰻が食いたかったろうな… と思うことが、なんとなく供養になる気がした。